目次
はじめに
3歳は、子どもの成長において大きな変化が見られる時期です。言葉が増え、友だち関係が広がり、自己主張も強くなってきます。
そんな中で
「この子、他の子と少し違うかも…」
「発達に遅れがあるのでは?」
と心配になることもありますよね。
これまでに多くの子どもたちを見てきましたが、近ごろは保護者の方や同僚の保育士から、発達に関する悩み相談をされることが増えてきていたように感じています。
そこでこのブログでは、3歳児に見られる発達障害の可能性がある行動と、適切な対応策についてお伝えします。
3歳の発達障害チェックリスト
では早速ですが本題に入っていきましょう。
唐突だとは思いますが、対象となる子供を思い浮かべながら、以下のチェック項目について振り返ってみてください。
以下の項目に当てはまるものが多い場合は、発達の特性が関係している可能性が考えられます。

ただし、いくつか当てはまるだけで必ずしも発達障害とは限りませんので、参考程度にチェックしてみてくださいね。
言葉の発達
- 単語のやり取りが少なく、会話が続かない
- 自分の興味のある言葉だけを繰り返す(例:車の名前だけを延々と言う)
- 「これ何?」「どうして?」などの質問をほとんどしない
- 指差しやジェスチャーが少ない
- 言われたことを繰り返すエコラリアが多い(例:「お茶飲む?」と聞くと「お茶飲む」と返す)
コミュニケーション・社会性
- 友達と遊ぶより、一人遊びを好む
- 「いれて」「かして」などの言葉を使わず、おもちゃを取ってしまう
- 目を合わせることが少ない、または極端に短い
- 名前を呼ばれても反応しないことが多い
- ごっこ遊びや真似をすることが少ない(例:お店屋さんごっこで役割を理解できない)
行動の特徴
- 同じ動作を何度も繰り返す(手をひらひらさせる、くるくる回る、物を並べるなど)
- こだわりが強く、環境の変化に強い抵抗を示す(例:いつもと違う道を通ると大泣きする)
- 落ち着きがなく、じっとしていられない(例:椅子に座って食事を最後まで取ることが難しい)
- 特定の音や感触に過敏に反応する(例:掃除機の音で耳をふさぐ、砂や粘土に触れるのを極端に嫌がる)
- 危険なことへの認識が薄い(例:高いところから飛び降りる、道路に突然飛び出す)
言葉の発達、コミュケーション・社会性・行動面という3つの視点から対象となるお子さんの姿をチェックしてもらいましたが、いかがでしたでしょうか。
これだけは覚えておいて欲しいのですが、チェックが多くついたからといって、必ずしも発達障害とは限らないということ。
子ども一人ひとりの成長には個性があり、得意なことと苦手なことがそれぞれあります。 大切なのは「この子にとって、どんな関わりが必要か」を見極め、適切なサポートをすることです。
チェックリストの解説
次に、先ほどのチェック項目についての解説をしていきます。
どうしてその姿が気になる行動なのか、という疑問もあるかと思うので、その点についてもお答えしていきますね。
言葉の発達についての解説

単語のやり取りが少なく、会話が続かない
3歳児の多くは「〇〇したよ」「〇〇食べたい」など、二語文以上の文章で自分の気持ちや経験を伝えられるようになります。会話も少しずつキャッチボールのように続くようになるため、常に一語文だけ、または質問に対して答えられずに会話が途切れてしまう場合は、言語理解や表出に課題がある可能性があります。
自分の興味のある言葉だけを繰り返す
例えば、電車が好きな子どもが「はやぶさ、のぞみ、こまち…」と電車の名前だけを繰り返し言う場合、言葉を使ったコミュニケーションというより、自分の興味に沿った言葉の羅列になっていることがあります。これは時に自閉スペクトラム症で見られる「限局した興味」の表れかもしれません。
「これ何?」「どうして?」などの質問をしない
3歳頃は「なぜ?」「どうして?」と質問が増える時期です。周囲への好奇心から生まれる自発的な質問が少ない場合、社会的関心の広がりに個性がある可能性があります。
指差しやジェスチャーが少ない
言葉が少なくても、指さしや身振りで気持ちを伝えようとするのが典型的な発達ですが、非言語コミュニケーションも少ない場合は、コミュニケーション全般の発達に遅れがある可能性があります。
エコラリアが多い
「お茶飲む?」と聞かれて「お茶飲む」とオウム返しをする場合など、質問の意味を理解して自分の意思で答えるのではなく、聞こえた言葉をそのまま繰り返している可能性があります。これは言語理解や社会的相互作用の発達に特性がある場合に見られることがあります。
コミュニケーション・社会性についての解説

友達と遊ぶより、一人遊びを好む
3歳頃になると、「一緒に〇〇しよう」と友達を誘ったり、簡単な役割遊びを楽しむ姿が見られます。常に一人遊びを好み、他児に関心を示さない場合は、社会性の発達に個性があるかもしれません。ただし、性格的に静かに一人で遊ぶことを好む子もいるため、他の特徴と合わせて考える必要があります。
「いれて」「かして」などの言葉を使わない
物の取り合いは3歳児でもよくありますが、徐々に「かして」「いれて」などの言葉を使って交渉するようになります。言葉を使わずに唐突におもちゃを取ったり、相手の気持ちに気づきにくい様子がある場合は、社会的相互理解の発達に特性があるかもしれません。
目を合わせることが少ない
目を合わせるのは基本的なコミュニケーションですが、自閉スペクトラム症の特性として、目の合わせにくさがある場合があります。ただし、文化的背景や性格によっても目の合わせ方には個人差があるため、それだけで判断するのではなく、他のコミュニケーション手段(表情、身振り)も含めて総合的に見ることが大切です。
名前を呼ばれても反応しないことが多い
名前を呼ばれて振り向かない場合、聴覚的な注意の向け方や言語理解に特性がある可能性があります。単に「集中している」「聞こえていない」場合もありますが、繰り返し呼びかけても反応がない場合は注意が必要です。
ごっこ遊びや真似をすることが少ない
3歳頃になると「ママごっこ」「お店屋さんごっこ」など、見立てや役割のある遊びを楽しむようになります。象徴機能や他者の行動の模倣が発達しているためですが、こうした遊びに興味を示さず、常に同じパターンの遊びに固執する場合は、遊びの発達に特性があるかもしれません。
行動の特徴についての解説

同じ動作を何度も繰り返す
手をひらひらさせる、くるくる回る、物を一列に並べるなどの同じ動作を繰り返す常同行動は、自閉スペクトラム症で見られることがあります。これらは時に自己調整や感覚刺激を求める行動で、強いストレスがかかると増えることもあります。
こだわりが強く、環境の変化に抵抗を示す
「いつもの道じゃないと嫌」「いつもと同じでないとかんしゃくを起こす」など、日常のルーティンや感覚に強いこだわりがある場合、変化への対応が苦手な特性がある可能性があります。予測可能性を求める気持ちが強く、柔軟な対応が難しい場合に見られます。
落ち着きがなく、じっとしていられない
エネルギッシュな子どもは多いですが、「椅子に座れない」「常に動き回っている」「順番を待てない」など、3歳児としても目立って落ち着きがない場合は、注意欠如・多動症(ADHD)の特性として現れることがあります。自己調整や抑制の発達に個性があることが考えられます。
特定の音や感触に過敏に反応する
掃除機の音で耳をふさぐ、特定の食感が苦手で給食が食べられない、衣服の縫い目や洗濯タグが気になるなど、感覚過敏は発達特性として見られることがあります。一般的に気にならない刺激が、その子にとっては不快なほど強く感じられている可能性があります。
危険なことへの認識が薄い
3歳児は好奇心旺盛ですが、基本的な危険(高い所、車、火など)への認識が芽生える時期です。繰り返し注意しても同じ危険行動をする場合、安全認識の発達や、周囲の言語指示の理解に特性がある可能性があります。
総合的な見方の大切さ

これらのチェックリスト項目はあくまで目安です。子どもの発達は直線的ではなく、得意なこと、苦手なことにばらつきがあるのが自然です。一つの項目だけで判断するのではなく、複数の領域で持続的に見られる特徴があるかどうかを観察することが大切です。
また、3歳は言葉や社会性が急速に伸びる時期でもあるため、数か月後には大きく変化していることもあります。焦らず子どもの成長を見守りながら、気になる点があれば専門家に相談し、適切な支援を考えていくことをお勧めします。
気になる場合の対応策
少しシビアな内容の記述を読み、気を落としかけている方もいるかもしれませんね。
でも、対応方法を変えることで、特定の気にある行動が減っていくパターンも考えられます。そこで、保育士として私が心掛けている対応法をいくつか紹介したいと思います。
言葉を育むために
言葉の遅れは、子どもに関する悩みの中でも特に多いジャンルです。
- 短く、ゆっくり、はっきりと話しかける
→子どもの目線に合わせて、「おはよう」「ありがとう」など、短い言葉から伝えましょう。 - 子どもの発言を受け止めて広げる
→「車」と言ったら「そうね、赤い車だね。かっこいいね」と言葉を補って返します。 - 絵本の読み聞かせを習慣にする
→同じ絵本を繰り返し読むことで、言葉の習得を助けます。指差しながら「これは何かな?」と問いかけるのも効果的です。
この3つのなかでも特におすすめなのが「絵本の読み聞かせ」。
言葉の発達には「絵本」を通してのやり取りが効果的です。イメージする力、物の名前、感情の言語化・・・など、絵本を通したやり取りは経験上効果絶大!

子どもが小さいうちは、できる限り絵本と関わる時間を作ってあげられるといいですね。
社会性を育むために
- 少人数から関わりを増やす
→まずは1対1の関わりから始め、徐々に小グループでの遊びに誘います。 - 視線を合わせる工夫をする
→「見て見て」と言いながら、興味のあるおもちゃや絵本を目の前に持ってきます。無理に目を合わせることを強要せず、自然な形で増やしていきましょう。 - 成功体験を積み重ねる
→「○○ができたね!」と小さな成功を具体的に褒めることで、自己肯定感を育みます。
「お友達と仲良くしようね」など、大人の希望やこうあるべきだという考えを押しつけるのではなく、その子に合った環境で発達を見守るようにしましょう。
いきなり集団に入るのではなく、大人と一緒に少しづつ慣れていけるようにする方法がおススメです。基本的にはスモールステップで、人との関わりの楽しさを感じられるようにしていきたいですね。
行動面をサポートするために
- 見通しを持たせる
→「まず手を洗って、それからおやつを食べるよ」など、次に何が起こるかを事前に伝えます。 - 視覚的な手がかりを用意する
→一日の流れを絵カードで示したり、時計を使って「長い針が3になったら片付けるよ」と伝えたりします。 - 落ち着ける環境を作る
→刺激が少なく、クールダウンできる場所を確保しておくと安心です。
言葉での支持が通りにくい場合には、視覚的に行動のサポートをしてみてください。
絵カードを使用したり、次にすべき行動をホワイトボードなどに貼っておくのもおススメです。また見通しを持つことが苦手な場合も多いので、遊び始める前にタイマーも見せながらこれが鳴ったらお片付けね。などと約束をしておくことも効果的です。
専門家に相談する目安
以下のような場合は、専門家への相談を検討してみましょう。
- 3歳半になっても言葉のやりとりがほとんどできない
- 保育園・幼稚園でも集団生活に大きな困難がある
- こだわりや癇癪が極端に強く、日常生活に支障がある
- 同年齢の子と比べて明らかに発達の差を感じる部分がある
相談先としては:
- 市区町村の子育て支援センターや発達支援センター
- 保健センターの3歳児健診
- かかりつけの小児科医
- 児童発達支援事業所や療育センター
早めに相談することで、適切な支援につながり、お子さんの成長をより効果的にサポートできます。「相談したら発達障害のレッテルを貼られるのでは」と不安に思う方もいらっしゃいますが、まずは専門家と一緒に子どもの特性を理解することが大切です。
保護者・保育士として大切にしたいこと
- 個性として受け止める
→発達の特性は「個性」の一部です。「できない」ことよりも「好きなこと」「得意なこと」に目を向けましょう。 - 焦らず、見守る姿勢を持つ
→子どもの発達には個人差があります。比較するのではなく、その子のペースを尊重しましょう。 - 小さな変化に気づき、喜ぶ
→「昨日はできなかったけど、今日はできた」という小さな成長をしっかり認めて、共に喜びましょう。 - 自分自身のケアも大切に
→子育てや保育は長いマラソンです。一人で抱え込まず、周囲に相談したり、時には息抜きをすることも大切です。
気になる姿があり、悩んでしまうかもしれませんが、一番困っているのは「子ども」かもしれません。
その子に合った関わりをや環境設定を取り入れることで、気になる姿が改善していくこともあるということも忘れないでくださいね。
まとめ

3歳児の発達には個人差があり、一つの特徴だけで発達障害と判断することはできません。チェックリストはあくまで参考として、お子さんの全体的な様子を見守りましょう。
気になる行動があっても、それは「困った子」ではなく「困っている子」かもしれません。私たち大人がその子の特性を理解し、適切な環境や関わり方を工夫することで、子どもたちは安心して成長していくことができます。
少しでも不安に思うことがあれば、一人で悩まず、専門家や周りの方に相談してみてください。子どもの成長を見守るのは一人ではありません。みんなで手を取り合って、子どもたちの未来を支えていきましょう。
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