【ADHDの特徴】忘れっぽい・覚えられないのはなぜ?原因はワーキングメモリ機能の低さ

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「何で何度も同じことを伝えているのに覚えられないんだろう?」
「伝えたこと、伝わってる?」

「私の言ったこと、理解できてないのかな?」

そんな子どもの気になる行動に困っていませんか?


 

もしかしたら、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の特徴の一つ「ワーキングメモリ機能の低さ」が関係しているかもしれません。

mozせんせい
mozせんせい

この記事では、ADHDの子どもが「忘れっぽい・覚えられない」原因と保育現場における具体例を紹介していきます。

ワーキングメモリって何?

 

ワーキングメモリとは、一時的に情報を保持し、操作する脳の能力のことです。

ADHDの子どもたちは、このワーキングメモリの機能が低いということが、研究で明らかになってきています。

分かりやすく解説

ワーキングメモリについて更に詳しく、分かりやすく説明していきますね。

ワーキングメモリとは脳の前頭前野の重要な働きの一つ。作業や動作に必要な情報を一時的に保持しながら、活用する機能のことです。

「作業記憶」

とも言われています。

例えば何気ない会話シーンを思い浮かべてください。

Aさん
Aさん

昨日の夜、雨がひどかったね。傘忘れて大変だったよ。Bは傘持ってた?

Bさん
Bさん

ほんと、雨酷かったよね。私は偶然傘を持っていたから大丈夫だったけど、Aさん大変だったんだね。

 

びしょ濡れで大変だったよ~傘持っていたならよかったね!

 

え?これのどこがワーキングメモリ?と思いましたか?

でもこのやり取り、たいていの人は無意識に行っている脳の作業なんです。

 

  1. 無意識のうちに、相手の言葉を一時的に頭に保持する
  2. その言葉を保持したうえで、自分の気持ちを声に出し相手に伝える

 

つまり私たちは、相手が話したことを一度自分の中で記憶し、その内容に対して返答をするという作業を無意識のうちに行っているのです。

なぜワーキングメモリ機能が低いの?

ではなぜADHDの子どは、ワークングメモリの機能の働きが低いと言われているのでしょうか。

 

それは前頭連合野の体積が問題なく発達している人に比べて、ADHDの人の体積が少ないことなどが原因と言われいます。

もう少し詳しく知りたい方向けに、少し難しい話になりますが、いくつかの原因もピックアップしました。
複数の脳画像研究により、ADHDの子どもに以下の特徴が見られることが明らかになっています。

 

  1. 前頭連合野の体積が小さい
    MRIを用いた研究では、ADHDの子どもは前頭連合野の体積が約5~10%小さいことが報告されています。
  2. 脳の成熟が2~3年遅れている
    ADHDの子どもの脳は、特に前頭連合野で成熟が通常より遅れる傾向があります。
    • 例えば、注意を集中させる能力や衝動を抑える能力は、一般的な発達に比べて2~3年遅れることが研究で示されています。
  3. 脳のネットワークの接続が弱い
    前頭連合野と他の脳領域(例えば、大脳基底核や辺縁系)との接続が弱く、これが情報処理の効率低下につながると考えられています。

これは最近の脳科学の研究で少しづつ明らかになってきていることです。

7歳から13歳まで経時的にMRIで大脳皮質の厚みを調べた研究によると、ADHDの子どもは定型発達の子どもに比べて、皮質の厚みが成長に伴って最大になるまでにおよそ3年の遅れがあり、とくに前頭前野の発達の遅れが顕著である。

「発達障害と脳」の最新研究! 計画的に行動できない、目の前のことを優先しがち……「ADHD」の背後にある「脳のしくみ」とは?(岡田 俊) | ブルーバックス | 講談社(4/4)

このような研究結果も出ています。

mozせんせい
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つまりワーキングメモリが低いことは、脳の機能の問題でしつけとは関係ないということです。

解明される以前は「しつけがなっていないから!」「本人のやる気がないからだ!」と考えられていました。

そのため、そのような発想が今もまだ根強く残っており、勘違いされてしまうことが多いのも現状です。

保育現場における具体例

脳のメカニズムということを理解してもらえたと思うので、ここからは実際の子どもの姿に置き換えていきたいと思います。

mozせんせい
mozせんせい

あ~、そんな子いるいる!と先生方のイメージが付きやすいように、保育現場におけるあるあるで解説していきますね。

※その日だけたまたまできなかった子ではなく、長期的に総合的に見て気になる子をイメージしてください。

日常の流れが理解できない【お散歩の準備】

「今からお散歩です!帽子をかぶって、次に靴を履いてね」と言われた場合、順序を記憶して実行します。

言われたことを瞬時に記憶できないため、なかなか行動に移せません。年齢によっては、周りの状況を見て、真似して行うことで、なんとか集団についていける子もいますが、年齢が低い場合は、全く違う行動をしてしまう姿も見られます。

製作活動

「まず紙に丸を描いて、その後ハサミで切っていきましょう」といった具体的な手順の場合、説明を記憶しながら作業を進めます。

説明の記憶ができていないので、途中で何をしたらいいのか分からなくなってしまい、自分の好きなことを始めたり、手が止まって動かなくなってしまったりします。

お片付けが途中で止まる

「ブロックを箱に片付けたら、絵本を棚に戻してね」と2つの指示を出すと、順序を理解し片付けます。


最初の「ブロックを箱に片付ける」はできたものの、その後何をすればいいか忘れてしまい、他の遊びを始めてしまうなどの動きがみられます。

日常生活で、常時そのような症状が見られる場合には、その子がどんなことに困っているの、メモを取り覚えておきましょう。

どうすれば支援できるの?

保育現場や家庭でできる具体的な支援方法をいくつか紹介します

 

  1. 視覚的な手がかりを活用する
    言葉だけでなく、絵や写真、具体的な見本を使って指示を出す
  2. シンプルで明確な指示
    複数の指示を一度に出すのではなく、一つずつ、短く、明確に伝える
  3. タスクを小さく分解する
    大きなタスクを小さな段階に分け、達成可能な目標を設定する
  4. ルーティンの確立
    毎日同じ手順で行う活動を増やし、予測可能性を高める
  5. ほめる・承認する
    小さな成功も大いにほめ、自信を持たせることを大切にする

この点についてはまた更に詳しい記事をまとめたいと思っています。

療育と保育の違いは?簡単にいうと「ねらい」のあり方

忘れっぽい子・覚えられない子と感じたら【ワーキングメモリ】を疑って

 

最後にもう一度、「ADHDの子が忘れっぽい・覚えられないのはなぜ?」という結論をお伝えします。

それは、脳の前頭前野の重要な働きの一つ「ワーキングメモリ」の機能が低いから。

低い原因は、「前頭連合野の体積が小さい」ことが原因として考えられている。

ということを理解しておきましょう。

ADHDの子どもたちの「忘れっぽさ」は、怠けているわけでも、わざと悪いことをしているわけでもありません。脳の特性によるものなのです。

 

周囲の理解と適切な支援が、彼らの可能性を最大限に引き出す鍵となります。一人一人の個性を尊重し、温かく見守ることが最も大切なのです。

 

ADHDについて、少しでも理解を深めていただけたら幸いです。

 

おすすめの本&参考文献

 

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