保育士の給料って安いもんね。
職場にいると、毎年のように必ずこの話題が職員間で出てきます。
なんで⁉こんなに毎日頑張っているのに・・・
そう嘆く気持ち、本当によく分かります。
そこで今回は、私たち保育士の給料に関するお話をしたいと思います。
なぜ給料が安いことが当たり前と言われてしまうのか
本当に給料が低いのか
給料が低い原因は何故か
この3つの点について、他の職種と比較しながら考えてみたいと思います。実際のデータも引用しつつ、少しでもこの現実を理解しやすくお伝えできたらと思います。
目次
なぜ給料が安いことが当たり前と言われてしまうのか
「保育士の給料が安いのは当たり前」と世間で言われている理由には、いくつかの社会的、経済的な要因が絡んでいると思われます。この問題は、長年にわたり保育士業界で語られてきたものであり、様々な理由から「当たり前」と感じられてしまう背景が出来上がってしまっているようです。
1. 公共サービスの一環としての位置づけ
保育は公共性が高いサービスであり、保護者の負担軽減や社会的な子育て支援の一環として提供されています。
そのため、保育料は家庭の所得に応じて低く設定されることが多く、保育士の給与が直接的に高くなることは難しいのです。運営費の多くは国や自治体の補助金に依存しているため、予算が限られる中では人件費を増やすことが難しく、結果として保育士の給与が低いままであるという構造が「当たり前」とされているのです。
2. 女性が多い職業への賃金低評価
保育士は、圧倒的に女性が多い職業であり、歴史的に女性が多い職業は、賃金が低く抑えられる傾向があります。
これは、社会全体で女性の仕事が軽視されるという不平等な側面から来ており、保育士もその影響を受けていると考えられます。
「女性がやる仕事だから給料が低くて当たり前」といった固定観念が長く根付いているため、給与が低いまま固定化されてしまっていると考えられます。
3. 高い「やりがい搾取」の傾向
保育士の仕事はやりがいが大きいとされています。
子どもの成長に直接関わり、社会にとって重要な役割を果たしていることから、やりがいを感じる人が多く、「子どもが好き!保育士になりたい!」と志願する人が多い職種です。
‟好き” という気持ちでこの仕事を選ぶ方が多いですよね。
しかし、この「やりがい」を理由に、賃金の低さが問題視されない「やりがい搾取」の状態が生まれています。つまり、情熱や使命感があるからこそ、低賃金でも働き続ける人が多いという現状が、「給料が低いのは当たり前」という認識を助長しています。
やりがい搾取とは、悪い言い方をすると「ブラック企業」というやつですね。
給料ももちろん上げてほしいけど、上がらなくても子供たちと過ごす日々が楽しい!という考えなのは、私も同じです・・・それがよくない現状を招いているのかもしれないですね・・・
4. 保育の需要と供給のミスマッチ
少子高齢化が進む一方で、共働き家庭の増加により保育の需要はかなり高まっています。
しかし、保育園の運営には限られた予算が割り当てられ、その中で多くの子どもを受け入れることが求められています。保育の質を維持するためには保育士が必要ですが、国からの予算の関係で給料を上げにくいという現状があります。
その結果、低賃金が維持されてしまい、それが「当たり前」という感覚を引き起こしているのです。
保育士は慢性的に人手不足の職業です。離職率も高い傾向にあります。働くお母さんが増えている現代、保育士の需要が増えているにもかかわらず、十分な待遇改善が行われていません。
人手不足にもかかわらず、予算の制約や財政状況の影響で給料が大幅に引き上げられないことが、「安い給料でも仕方ない」という意識を助長させています。
子どもを育てる保護者にとってみたら、できる限り安い保育料で子どもを見てほしいのは当たり前。なので保育料をあげることも難しく、国からの補助金も限られている。という負の連鎖を何とか打破していきたいですね。
本当に給料が安いのか、他の職種と比べてみると?
では、保育士の給料がどのくらい低いのか、他の職種と比較してみましょう。
厚生労働省が公表しているデータによると、2024年時点の保育士の平均年収は約396万円前後と言われています。同じ福祉分野の介護職の平均年収は約380万円なので保育士同様低賃金な印象です。
一方、全職種の平均年収は約450万円です。
心理カウンセラーは約459万円、看護師は508.2万円、一般事務は510万円というデータもあります。
引用:ホームページ | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)) (mhlw.go.jp)
保育士は国家資格なので、やはり国家資格の必要なその他の職と比べると、年収が低いと言えるでしょう。
参考文献 看護師と保育士の比較
引用①:【2024年版】看護師の平均年収はいくら?給料・ボーナス・新卒の初任給も解説|レバウェル看護 お役立ち情報 (kango-oshigoto.jp)
引用②:保育士の給料について徹底解説!私の給料って低い?給料を上げるには? | コメディカルドットコム (co-medical.com)
現状 近年賃上げ傾向にあり!国の制度と保育士の給料の変化
保育士は給料が安い!と、口癖かのようにつぶやいてきた先生方の現状はいかがでしょうか?
確かに、看護師等の職種を比べたらとてもじゃないけど、給料が多いとは言えないレベルの給料ですが・・・少しずつ増えてきてはいないでしょうか?
下の表は、保育士の過去10年の平均年収の推移です。
少しずつではありますが、保育士の待遇改善に向けた取り組みが国の制作によって行われてきているんです。
例えば、2020年には保育士の処遇改善加算が導入され、勤続年数が長い保育士には手当が支給されるようになりました。また、2022年にはコロナ禍で保育士の重要性が再認識され、特別な支援金が支給されたこともありましたよね。
しか~し!!!全体としての給料の上昇はまだまだ十分でなく10年前と比べると約50万円程度の上昇にとどまっています。
多少の改善はあるものの、他の職種と比べて大きな差が縮まったわけではありません。
今後の国の制作にも期待したいですね。
保育士の給料が安い原因
保育士の給料はどこから出ている?
そもそも先生方は、保育士の給料の資金はどこからきているか知っていますか?
子どもからもらう保育料でしょ?と思っている方も多いようですが、給料の大半は国や地方自治体からの補助金に支えられており、保育料だけでは十分に賄えていないのが現実です
そう、つまり・・・保育士の給料が安い主な理由の一つは、保育園や施設の運営資金の多くが公的な助成金に依存していることにあるんです。
もちろん保護者からの保育料もありますが、それだけでは運営が成り立たないため、自治体からの補助金や国の支援が欠かせません。しかし、その予算配分が限られており、特に人件費に十分な金額が確保されないことが問題です。
また最初に、「保育士の給料が安いのは当たり前なのか」という項目でも紹介させてもらいましたが、保育士の仕事は「女性が多い職種」として認識されていることから、賃金が低く抑えられ、国からの補助金が十分にもらえていない現状があります。
男女の賃金格差が存在する中で、保育士のような女性が多い職業では、給料が他の職種よりも低いままであることが多いのです。
補足*保育料と補助金の割合
実際、保育園の運営費のうち、保育料で賄える部分は全体の20~30%程度とされています。残りの約70~80%は、国と地方自治体からの補助金や助成金によって補填されています。この補助金は、保育士の給与を含めた人件費、設備維持費、教材費など、運営にかかるさまざまな経費に使われています。
補助金の仕組み
少し難しくなりますが、保育士の給料の財源となっている補助金についても少しご説明させていただきます。
公的補助金は、主に以下のような仕組みで支給されています。
- 運営費補助金
保育園の運営に必要な経費を補填するためのもので、保育士の給与もここから支払われます。特に認可保育園では、一定の基準を満たすことで補助金が支給されるため、保育料が抑えられ、保護者の負担軽減にもつながっています。 - 処遇改善加算
保育士の待遇改善を目的とした補助金で、勤続年数が長い保育士や、役職につく保育士に対して追加の給与が支給される仕組みです。2020年にこの制度が導入され、経験豊富な保育士のモチベーション向上や離職防止を狙っています。 - 施設整備費補助金
保育園の設備や施設の整備に対する補助金です。保育施設の安全性や快適さを保つために必要な資金として支給されています。
保育料だけでは全然足りない
保育士の給料を上げるために、保育料を高くすればいいのでは?と感じるかもしれませんが、それにも限界がありますよね。
保育料を引き上げて人件費を賄おうとすると、保護者の負担が大きくなりすぎるため、最終的には国や自治体からの補助が重要になります。
また保育料は、家庭の所得に応じて決まるため、低所得世帯に配慮して保育料が抑えられています。
保育園は公共の福祉サービスとして機能している側面が強いため、運営を成り立たせるには保育料をあげて、保育士の賃金を増やすという考えには行きにくいのです。
このような理由から、保育園の運営や保育士の給与は、国や地方自治体の補助金に大きく依存していることが分かっていただけたかと思います。そのため、補助金の増額や制度の改善がなければ、保育士の給料が劇的に上昇することは難しい現実があるというわけです。
給料が安いことが当たり前はおかしい!
給料が安くても諦めていませんか?保育士は高度な専門職です。皆さん、自信を持ってください!
保育士は子どもの発達を理解し、保育計画を立て、安心・安全な環境を提供する国家資格を持つ専門職です。
こうした高度な専門知識を要する仕事にもかかわらず、賃金が低く抑えられているのは、当たり前ではないんです!
これからの保育士の未来
今後、保育士の給料がどのように変わっていくかは、国の政策や社会の意識の変化に大きく依存しています。
我々がどれだけ努力しても、給料に全然反映されないのは、やはりなんとかしたいところですね!
保育士の処遇改善や、保育料無償化、配置基準の改定など、近年ようやく国が保育業界に目を向け始めているように感じています。
他の国家資格の給料と差がなくなるのはあと何年もかかるのでしょうか…目処は立ちませんが、ぜひとも国の政策に期待しましょう!
保育士が安心して働ける環境を作るためには、さらに待遇改善が求められています。私たち保育士は、子どもたちの成長を支える大切な存在です。みんなで声を出し、保育士の待遇がよりよくなっていくよう頑張っていきましょう!
給料が低くて悩んでいる先生へ
最後に、個人的なお話もさせていただきますね。
私は今の保育園に就職するまでは、残業代も出ない、持ち帰りも多い、土曜出勤しても手当もない、有給なんて一度も使ったことがない。そんな園で勤務していました。
今思えば、何年も働いていたのに、私の有給はなんでなかったのか不思議ですが・・・
でも、転職することを決め、今の園に転職してからは、給料も安定、土曜手当あり、早番遅番手当あり、有給もばっちり利用でき、子どもの病気による欠勤でも看護休暇もあり、とても恵まれた環境で働くことができています。
給料の体制も明確かされており、役職の手当や、処遇改善手当も全職員しっかりもらうことができています。
もし今の園の給料体制に不満が少しでもあるのであれば、転職も一つの選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
きっともっと良い環境で働くことのできる園に巡り合えると思います。私がそうだったように、給料が低くて悩んでいる先生方の力になれたらと思います。
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