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【年少担任必見】みんなはできてるのに…一斉指示が通らない子への支援と見立て方

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「伝えたけど動かない」

「この子だけ反応がない」

年少の春、そんな場面にモヤモヤしたことはありませんか?しかし多くの子は園生活に慣れるにつれ、少しずつ一斉指示を理解して動けるようになります。


「お片付けしようね」「椅子に座ろうね」という声かけに、だんだんと反応できるようになっていくるのが一般的。

でも中には、聞いてるのに動けない子もいるのではないでしょうか?

「もしかして発達がゆっくり?」
「接し方が違うのかな?」
「私の伝え方が悪いの?」

そんな不安を感じることもありますよね。でも大丈夫。

一斉指示が通らないのは、その子が悪いのでも、あなたの保育が悪いのでもありません。ただ、「育ちのペース」と「必要な支援」が、少し違うだけなんです。

この記事では、「なぜ通らないのか」→「どこを見立てるか」→「どう支援するか」を、現場視点で具体的に解説します。

一斉指示が通らないのは「発達のペースの差」

年少クラスでは、一斉指示が通る子と通らない子が混在します。でもこれは「できる・できない」ではなく、育ちのペースの違いなんです。

特に、一斉指示を理解して動くには、以下の3つの力が必要になります。そして、この3つの力が育つスピードは、子どもによって大きく異なるんです。

①注意:聞く準備ができる力

一つ目が「先生の声」だけに注目する力のこと。

保育室には、たくさんの刺激があります。

  • 友達の声や動き
  • 窓の外の音や光
  • おもちゃ、掲示物

多くの子は、だんだんと「今は先生の話を聞く時間」と選択的に注意を向けることができるようになります。

でも、まだこの力が育っていない子は、すべての刺激が同じ強さで入ってきてしまうのです。
だから、「聞いてるのに動けない」のではなく、「他の刺激も同時に入ってきて、どれを聞いたらいいのか選べない」状態なんです。

②保持:聞いた内容を覚えておく力

指示を頭の中に”保持”しておく力のこと。これはワーキングメモリ(作業記憶)と呼ばれます。

「片付けて、手を洗って、椅子に座ってね」

この3つの指示を、頭の中に保持しておくのは、年少にはまだ難しいことが多いんです。
3〜4歳では、まだ1〜2個の情報しか保持できない子がほとんど。

だから、指示を聞いた瞬間は「わかった!」と思っても、動き出した瞬間に忘れてしまう


これは「やる気がない」のではなく、脳の発達がまだ追いついていないだけなんです。

③抑制:動きたい気持ちにブレーキをかける力

「やりたい!」という衝動を、自分で止める力のこと。

「まだ座っててね」「話を最後まで聞いてからね」と言われても、体が勝手に動いてしまう。
これは、前頭前野(ぜんとうぜんや)という「ブレーキをかける脳の部分」がまだ育ち途中だから。

多くの子は、園生活を重ねる中で、少しずつ「待つ」「止まる」ができるようになります。でも、まだこの力が育っていない子は、「聞いてるのに動いちゃう」。

これは、まだ”動きを止める力”が育ってないだけなんです。

 

みんなはできてるのに…と焦る気持ち、よくわかります。でも、この3つの力が育つスピードは、本当に個人差が大きいんです。”まだ育ち途中”と捉えることが、支援の第一歩です。

みんなはできてるのに通らない子——どこで止まってる?

一斉指示が通らない子を支援するには、まず「どの段階で止まっているか」を見立てることが大切です。

一斉指示が通るには、以下の4つのステップがあります。

子どもによって、“止まるポイント”が違うんです。
以下の表で、お子さんがどこで止まっているかチェックしてみましょう。

ステップよくあるつまずき見立ての視点
聞く声は届いているけど、周囲の音に注意が向く注意のコントロー(感覚の過敏・鈍麻も関係する)
理解する言葉の意味がまだあいまい言語理解・語彙の少なさ(「片付けて」がわからない)
覚える「片付けて→手を洗って」の2つ目が抜けるワーキングメモリ(作業記憶)の容量
動くわかっていても動けない、固まる抑制機能・体の感覚統合(動きの切り替えが苦手)

「聞く」で止まる子

  • 名前を呼んでも振り向かない
  • 静かな場所では聞けるが、ざわざわした場所では聞けない
  • 特定の音(チャイムなど)には反応する

注意のコントロールがまだ育ち途中の可能性。
音や光などの感覚の過敏・鈍麻も関係していることがあります。

 

「理解する」で止まる子

  • 「片付けて」「並んで」などの抽象的な言葉だと動けない
  • ジェスチャーや写真を見せると動ける
  • 同じ指示でも、言い方によって反応が違う

言語理解がまだ育ち途中の可能性。
語彙が少なかったり、抽象的な言葉の意味がまだ理解できていないことがあります。

「覚える」で止まる子

  • 1つの指示なら動けるが、2つ以上だと抜ける
  • 途中で友達に話しかけられると、次の行動を忘れる
  • 「次は何するんだっけ?」とよく聞く

ワーキングメモリがまだ育ち途中の可能性。
情報を頭の中に保持しておく容量が、まだ小さいことがあります。

「動く」で止まる子

  • 指示は理解しているが、体が動かない
  • 動き出すまでに時間がかかる
  • 遊びから次の活動への切り替えが苦手

抑制機能や感覚統合がまだ育ち途中の可能性。
「今の動きを止めて、次の動きに切り替える」ことが、まだ難しいことがあります。

 

「どこで止まっているか」を見極めるには、「できる時」と「できない時」の違いに注目してみましょう。

①静かな時は聞けるが、ざわざわした時は聞けない → 「聞く」で止まっている
②1つの指示なら動けるが、2つ以上だと抜ける → 「覚える」で止まっている

この「差」が、支援のヒントになります。

「通るようになる」ための支援3ステップ

一斉指示が通るようになるには、伝え方よりも「環境」を意識することをおすすめします。
「耳」「目」「体」の3方向から伝える工夫がポイントです。

以下の3つのステップを組み合わせることで、「止まっていた子」も動けるようになります

ステップ① 視覚で見せる(目で理解できるようにする)

「聞いてわかる」よりも「見てわかる」方が、年少には断然伝わります。

耳で聞くだけでなく、目で見てわかるようにすると、さらに伝わりやすくなります。

視覚的アプローチの具体例

  • 片付けカード(おもちゃの写真+矢印)
  • 並ぶカード(足型マークや電車のイラスト)
  • タイムタイマー(「あと5分で終わり」が見える)
  • スケジュールボード(今日の流れを写真で示す)

特に「理解する」で止まっている子には、視覚支援が効果的です。

 

ステップ② 合図を統一する(音+ジェスチャーで「今から話すよ」を知らせる)

「今から話すよ!」という合図を統一すると、子どもの注意を集めやすくなります。

音で注目を集める例

  • パンパン(手拍子)
  • チャイム
  • タンバリン
  • ピアノの音(特定の音)

ジェスチャーで方向を示す例

  • 「〇〇先生を見てね」(自分の目を指さす)
  • 「ここに座ろう」(座る場所を指さす)
  • 「トントン!」(膝をたたく)+「ピタッ!」(座る動作)

特に「聞く」で止まっている子には、合図の統一が効果的です。

園内で合図を統一すると効果的!「トントン=座る」「チャイム=集合」など、園全体で合図を統一しておくと、担任が変わっても子どもが迷わず動けます。新年度の引き継ぎもスムーズになりますよ。

ステップ③ 短く区切る(1文=1動作で、次の行動を見通せるようにする)

「情報を少なくする」ことで、ワーキングメモリの負担を減らせます。

NG例:
「お片付けして、手を洗って、椅子に座ってね」
→ 情報が3つあるので、年少には多すぎます。

OK例:
「お片付けしよう!」(動作を見せる)
→ 片付けが終わったら
「手を洗おう!」(次の動作を見せる)
→ 手洗いが終わったら
「椅子に座ろう!」(座る場所を指さす↓

1つずつ、短く、動作と一緒に伝えるのが鉄板です。

特に「覚える」で止まっている子には、短く区切ることが効果的です。

支援の種類効果的な子具体例
視覚で見せる「理解する」で止まる子カード・写真・タイムタイマー
合図を統一「聞く」で止まる子チャイム・手拍子・ジェスチャー
短く区切る「覚える」で止まる子1文=1動作

実は”動きながら聞く”もOKなんです。止まって聞くより、体を動かしながらの方が理解しやすい子もいます。”じっと座って聞く”だけが正解じゃないんですよ。

 

どう見立てる?「通らない子」の観察ポイント

保育士が現場でできる簡易チェックリストです。
以下のポイントを観察することで、「どこで止まっているか」「どんな支援が必要か」が見えてきます。

観察ポイント①:指示のどの段階で止まっているか

  • 名前を呼んでも反応がない(「聞く」で止まる)
  • 言葉だけだと動けないが、ジェスチャーがあると動ける(「理解する」で止まる)
  • 1つの指示なら動けるが、2つ以上だと抜ける(「覚える」で止まる)
  • 指示は理解しているが、体が動かない(「動く」で止まる)

観察ポイント②:状況によって差があるか

  • 静かな時は聞けるが、ざわざわした時は聞けない
  • 少人数だと動けるが、大人数だと動けない
  • 遊びの途中では聞けないが、活動の最初なら聞ける

「できる時」と「できない時」の差が、支援のヒントになります。

 

観察ポイント③:「できる時」のパターン

  • 声のトーン(高い声・低い声・ゆっくりした声)
  • 距離(近くで話す・遠くから話す)
  • 人数(個別・小集団・全体)
  • 時間帯(朝・昼・夕方)

→ 「この条件ならできる」を見つけることが、支援の第一歩です。

 

見立てのコツ
これは「苦手探し」ではなく、「支援が必要なポイント探し」です。「この子は聞けない」ではなく、「静かな環境なら聞ける」「カードがあれば動ける」という「できる条件」を見つけることが、見立ての本質です。

 

まとめ:「通らない」には、必ず理由がある

「みんなはできてるのに…」そんな不安を感じたら、まずは「どこで止まっているか」を見立ててみましょう。

  • 一斉指示が通らないのは育ちのペースの差
  • 「聞く→理解する→覚える→動く」のどこで止まっているかを観察
  • 視覚・合図・短文の3つで「通る環境」を整える

通らないのは、子どもが悪いのではなく、まだ伝わる環境が整っていないだけ。
焦らず、一人ひとりに合わせた伝え方を見つけていきましょう。

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