発達障害という言葉をよく耳にするようになったけど、具体的に自分では説明できない・・
「気になる子」ってみんな発達障害なの?
個性とは違うの?
病気なの?
保育や教育現場に携わっていると、こういった疑問がたくさん出てきますよね。
これからの教育現場では切っても切り離せない専門分野だと思います。
まずは、基本的な「発達障害」への知識から学んでいきましょう。
目次
発達障害は障害でもあり個性でもある
結論から言うと、【発達障害=障害】でもあり、【発達障害=個性】なんです。
答えになってない!と思うかもしれませんが、発達障害は時と場合によって障害にもなり、個性にもなり得るのです。
具体的な場面を用いながら考えていきましょう。
障害としての側面
発達障害は、医学的には「脳機能の特性」による日常生活や社会生活での困難を伴う状態として捉えられます。そのため、周囲の環境やサポートが整っていない場合、以下のような問題が生じることがあります。
• 集団生活や職場での不適応
• 学校や仕事での具体的な困難(例:指示の理解、時間管理)
• 対人関係での摩擦や孤立
このような状況では、発達障害を「障害」として適切に理解し、支援を受けることが重要です。
例えば、ADHDの特性が原因で仕事の締切が守れない場合、職場環境を調整する支援が必要となり、「障害」と捉える考え方に偏ります。
個性としての側面
発達障害の特性は、「その人らしさ」や「強み」としても捉えられることがあります。周囲の理解や適切な環境が整っていると、以下のようなポジティブな特徴として活かされることがあります。
• ASD: 高い集中力、独創的な発想、得意分野での専門性
• ADHD: 行動力やエネルギー、即応力
• LD: 視覚や聴覚を活用した独自の学び方
このように特性を生かせる環境では、発達障害が「個性」や「能力」として評価されます。
例えば、ASDの特性、得意分野での専門性においては、高い正確性を求められる職種で大いに発揮されます。魚関係にとても詳しい「さかなクン」は良い例だと思います。
「障害」と「個性」の境界は環境次第
つまり、発達障害が「障がい」として感じられるか、「個性」として生かされるかは、周囲の環境や支援の有無に大きく依存すると言えます。
• 周囲の理解や配慮が不足している場合、その特性が「困難」として表れることが多い。
• 一方で、特性を活かせる環境や支援が整えば、「個性」として輝くことができる。
そういった視点から考えると、「障害」と「個性」のどちらか一方に固定するよりも、以下のような柔軟な視点を持つことが大切です。
• 本人が困難に感じる場面では「障害」として適切に支援する。
• 強みや得意な部分を見つけ、「個性」として伸ばす。
発達障害は状況に応じて「障害」にも「個性」にもなり得るということですね。
周囲の理解や支援が、どちらとして感じられるかに大きな影響を与えていると考えてください。
発達障害とは?
次は、発達障害についても理解を深めていきましょう。
発達障害って何?と聞かれたときに、的確に答えることはできますか?
発達障害とは、神経発達に関連する障害で、幼少期から現れる脳の機能的な特性によって生じる、コミュニケーション、社会性、学習、注意力などに 困難がある状態を指します。
発達障害の定義について、日本では主に発達障害者支援法に基づいて説明されています。この法律では、発達障害を以下のように定義しています。
発達障害者支援法第2条:
「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)及びこれに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものであり、知的障害を伴う場合及び伴わない場合を含むものをいいます。
具体的な障害の種類
発達障害は大きく分けて3つに分類することができます。
- 自閉スペクトラム症(ASD:自閉症やアスペルガー症候群を含む)
- 学習障害(LD:読む・書く・計算する能力に特化した困難)
- 注意欠陥多動性障害(ADHD:不注意、多動性、衝動性)
ここでは大まかに3つの特性を覚えましょう。
①自閉スペクトラム症(ASD)
他者とのコミュニケーションや社会的関係の構築に困難を感じやすい状態。特定の物事に強い興味やこだわりを持つこともある。
②学習障害(LD)
読み書き、計算など特定の学習分野で困難が生じる状態。知的な能力には問題がないことが多い。
③注意欠如・多動性(ADHD)
集中が難しい、多動的、衝動的な行動が目立つ状態。日常生活や学習において注意力の維持が難しい場合がある。
ADHDって何?という方には
「ADHDとは?現役保育士が分かりやすく解説」のページで、ADHDについての知識を深めることができます。参考に。
自閉スペクトラム症やADHD、LDなどの発達障害は、それぞれ連続しており、医師によって診断名が異なるという状況も起きてきます。
つまり、単独で症状が現れることもありますが、いくつかの発達障害が重なりあうことがあることを知っておいてください。
脳機能の障害
発達障害は医学的に、脳の特定の機能に由来する障害とされており、育て方や環境が原因ではありません。
低年齢で発現
通常、発達障害の症状は幼児期から現れます。幼児期に現れる発達障害の特性は年齢により異なります。
0~2歳=自閉スペクトラム症
3~5歳=自閉スペクトラム症+ADHD
6歳以降=ADHD+学習障害
あくまでも目安の時期ではありますが、これくらいの時期に特性がよく見られるようになると言われています。
知的障害の有無を問わない
知的障害を伴う場合も、伴わない場合も発達障害に含まれます。
発達障害は、医学的な診断としてDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)やICD(国際疾病分類)に基づいて診断されますが、上記の法律的な定義が日本での支援や理解の基盤となっています。
気になる子どもたちへの理解を深めるために
気になる子はみんな発達障害?
最後に一つ理解していてほしいことがあります。それは、【気になる子=発達障害】ではない!ということ。
発達障害という言葉が一人歩きし、【気になる子=発達障害のある子】と思われてしまうことも多々あるようです。
しかし、「気になる子」が目立つ行動をする理由は、必ずしも発達障害だけが原因ではありません。単に発達のスピードが他の子どもと違っているだけの場合や、環境の変化が影響している場合もあります。
そのため広い視野で子どもの姿をとらえることが大切です。
保育者としてどう対応するべきか
気になる子どもたちへの対応は、発達障害の診断の有無にかかわらず、個別に行うことが大切です。
判断を急がない
保護者との連携
専門機関との相談
まずは、発達障害かどうかを決めつけず、子どもの行動や感情の背景を観察し続けることが重要です。そして家庭での様子を聞き取り、保育環境と照らし合わせながら、子どもにとって最適な対応を考えます。
必要であれば、発達相談センターや専門医への相談を保護者に勧めるなどして、少しずつ対応を考えていくようにしましょう。
理解を深めるための姿勢
今後「気になる子」と関わることが増えることを想定し、発達障害の特性や対応方法を学ぶなど、理解を深めるための姿勢を大切にしていきたいですね。
そのための手段としては
- オンラインの研修を受ける
- 発達支援系の資格を取得して理解を深める
- 書籍で勉強する
などの方法があります。
また、気になる子への理解を深める方法の一つとして、園全体つまりチームで支えるという意識も持っていてほしいと思います。
保護者
保育者
専門家
子どもを取とりまく専門家とうまく連携することで、子どもへの支援がより充実します。
定期的な学びの場を作り、発達支援への知識と理解を深めていきましょう。
おすすめの本
児童発達支援士の資格を持つ私がおススメする発達支援系の参考書です。資格を取得するという方法ももちろんおすすめしますが、まずは簡単に手に入る本から始めてみるといいとですよ。
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