「ダメでしょ!」
「走らないで!」
「お友達のおもちゃ取らないよ!」
保育の現場に立っていると、とっさの出来事に対し、どうしても、こんな否定語が出てきてしまいますよね。
その気持ちよく分かります!
きっと否定語はよくないと分かってはいるものの、目まぐるしい日常に追われていると、咄嗟にその一言が出てしまうんですよね。
でも、否定語はやっぱり子どもの成長にとってあまり良いものではありません。
そこで、先生たちに「保育士」というプロの自覚を持ってほしいという願いも込めて、私がいつも保育現場で心掛けている声掛けの言い換え方法をお伝えしたいと思います。
目次
否定的な声掛けがよくない理由
まず初めに、否定的な声掛けがどうしてよくないのか、という点についてお話していきます。
否定語は想像しづらい
では早速質問です。
「赤色の車を想像しないでください。」
どうでしょう。赤色の車がなんとなく脳裏に浮かびませんでしたか?
大人の場合、「想像しないで」と言われたら、赤色の車を想像したことをやめよう・・・と思考の変換が頭の中で勝手にされるのです。
しかし、子どもの場合には、〇〇しないでと言われても、なかなかそれができません。
「走らないよ!」と、とっさに言われた場合、子どもたちの頭の中では、「走らない」というワードが残り、先生が何を求めているのかが分かりづらくなります。
否定語は想像しづらいのです。
このように、否定語を使うことによって、本来求めている行動がはっきりと伝わないのは、残念ですよね。
委縮してしまう
職場で園長先生から「それはやらないで」「そのやり方は違う!」とお叱りばかり受けていたら、先生はどんな気持ちになりますか?
嫌ですよね。大半の人が嫌な気持ちになると思います。
そうなってくると、だんだん ‟園長先生に怒られないようにやる” という目的に変わってきてしまいます。
否定語ばかり言われると大人でも委縮してしまうんです。
ということは、子どもでも同じ。
「ダメ」
「〇〇しない」
否定ばかりされていたら、後々、先生の顔色を伺ってばかりの子になってしまう可能性もあります。先生がダメと言ったからダメ。先生に怒られないためにやる。それでは、子供たちの本来の力を十分に伸ばしてあげられなくなってしまいます。
否定的な言葉により、子どもが委縮してしまう可能性があります。
肯定的な声掛けが必要な理由
否定的な声掛けがよくないことはきっと皆さん知っていることだと思うので、さっそく肯定的な言葉についてお伝えしていきたいと思います。
まず初めに、肯定的な言葉が子供たちに与える影響についてお話していきます。
子どもが取るべき行動がわかりやすくなる
「ダメ!」「〇〇しないで!」という否定の言葉だけでは、子どもは次に何をして良いかわからなくなってしまうということは先ほどお伝えしましたよね。
そこで大切なのが「〇〇しようね」という行動を示す肯定的な言葉かけ。
「走らないで!」という否定の言葉のかわりに「歩いてね。」という肯定語に変えてみましょう。
肯定語に言い変えることで、次に何をしたら良いか子どもがすぐに理解できるんです。
どうしてダメなのかを知ることも大切ですが、その時にすべき行動を伝え、まずは ‟その時に取るべき行動ができた!” という成功体験をすることも大切です。
自己肯定感を育むことが出来る
「ダメ」
「それはやらないよ!」
「もうおしまいって言ったでしょ!?」
こんな声ばかりかけられていたら、どう感じますか?
いつも怒られてばっかり。ぼく(私)は何をやっても全然できないんだ。と、どんどん自己肯定感が低くなってしまいます。
でも先ほどのように、「歩いてね」と声をかけられたとしたら、さほど子どもの心に傷が付いたり、落ち込んだりしてしまうことが減りますよね。
肯定的な声掛けは、子どもの自己肯定感を下げてしまうことなく、むしろ「できた!」という自己肯定感を育むことにつながっていくんです。
肯定的な言葉一覧
保育現場で使いがちな否定語を、肯定語に言い換えてみます。
この言い換えが正解ということは全くありませんので、自分で思いつく言い換え方があれば、それを試してみてくださいね。
否定的な言葉 | 言い換え |
おしゃべりしないよ | お口はチャックね! あ、〇〇君は静かができてすごいね!あとはどの子ができてるかな? |
さわらないで! | 今日は見るだけだよ。大事だからね。 |
登らないで | 降りてね 降りて下で遊ぶよ |
おもちゃを投げないで | 優しく使ってね |
早くして!急いで! | 新幹線みたいに速くできるかな? |
ちゃんとご飯食べないと | カバさんの口できるかな? |
走らないよ | 歩いてね |
よそ見しないよ | こっちを見るよ、前を見てね |
しゃべらないで→お口はチャック
子どもたちに静かにしていてほしいとき、「しゃべらないで!」「おしゃべりしません」という否定語をついつい使ってしまいがちですが・・・
「しゃべらないで」「おしゃべりはしません」
↓
「静かだよ」
「お口を閉じてシーしようね」
「お口にチャック」
という肯定語に言い換えることが出来ます。
「お口チャック」は比喩表現ですが、子どもたちにわかりやすく伝わる定番の言い換えですね。
他にも『5数えたらみーんな「し~」の魔法をかけてみるよ?せ~の「5.4.3.2.1..し~」』
どうでしょう?これならきっと、子どもたちは楽しい気持ちのまま静かにできるかもしれませんね。魔法なので「ちちんぷいぷいの、ぷ~い!!」なんて魔法使いになってもいいかもしれませんね。
肯定的な声掛けは、子どもの心も引き付けます。静かにしてほしいときにこんな声掛けが出来たら、「この先生どんなことお話してくれるんだろう?」とワクワクするかもしれないですね。
注意されてできたのではなく、子どもの意志で静かにできたという経験がとても大切だと思います。
触らないで→これは見るだけね
「触らないで」「何で触ったの⁉」「ダメって言ったでしょ?」
↓
大事だからそっとしておこうね。
触ると痛いいた~いになっちゃうかもしないから、見るだけにしようか。
「触らないで」という禁止用語も、言い方次第で全くトゲのない言葉に変わります。
否定語を肯定的に変え、「見るだけだよ」という先生が求める具体的な行動を示すんです。「大事だから」というワードも子どもの心に響きやすいかもしれないですね。
登らないよ→下に降りてきてね
「登らないよ」「登ったらダメって言ったでしょ?」
↓
「下に降りてきてね」
「高いところは、落ちると危ないから降りようね」
どうして降りてほしいのか、という理由を伝えてもいいと思います。
もし、まだ登ってほしくないという場合は、「先生が近くに行くまで、待っててね」「一緒に登ろうね」などの声掛けもいいと思います。
ダメな行動と思うことを、先生がどうしてほしいのか担当直入に伝えてください。
おもちゃ投げないで→優しくね
「おもちゃは投げないよ!」
↓
「あ、大変!おもちゃさんが痛い~って言ってたよ。」
「優しくね」
例えば、おもちゃに耳を当て、あたかもおもちゃがしゃべっていたかのように演出してみてはどうでしょうか?
この方法は、保育現場ではよく使っているかもしれせんね。
本当は話すはずのないおもちゃやぬいぐるみがしゃべっている設定にすることで、「え?そうだったの?」と子どもたちの心に響いてくれますよ。
早くして、急いで!→新幹線みたいに
「早く」という言葉自体は、否定的な言葉ではないのですが、個々のペースを大事にするという目線ではマイナスな印象もあるワードです。
外遊びの時間になかなか準備の進まないG君
「G君急いで!急がないと遊べないよ!」
そんな場面たくさんありますよね。
そんな時G君のやる気を引き出せる声は何だろう・・・と考えてみましょう。
新幹線と飛行機どっちが速いかな?今日は新幹線みたいにやってみよう!
新幹線みたいに速くなったら、G君たくさん外で遊べるね!よ~いドン!!
‟新幹線みたいに” ‟飛行機みたいに” ‟仮面ライダーみたいに” プリキュアみたいに”・・・
子どもたちにとって、かっこいい、憧れ、という存在の登場人物を声掛けの中に呼んでみてください!
するとたちまち、「よ~し!!」とやる気スイッチがONになる子が多いですよ。
更に「よ~いドン!」と言われると年齢によっては、張り切って活動に取り組める場合も多いですよ。
ちゃんとご飯食べるよ→カバさんの口にする?恐竜さんにする?
偏食の子や、小食の子が全然給食を食べてくれないと、どうしても食べさせよう!!と力が入ってしまいますよね。
そうなってくると、食べさせたい保育士と、どんどん口を開かなくなる子どもという構図が出来上がってきてしまいます。これでは押し問答ですね。
そこで、ふっと方向転換しますよ!!
カバさんのお口みたいに「あ~ん」!
今度は恐竜さんのお口みたいに「あ~ん!」
「次は何にしようかな・・・犬かな?・・うさぎかな?」
など、子どもの気持ちを食べるとは少し違う方に向けてみるのはどうでしょう。
「次はライオンにする~!!」と子どもから乗ってきてくれることもありますよ。
いかに子どもの食べるスイッチをオンにできるかが、声掛けのポイントです!
否定語を肯定語へ言い換えるコツ
最後に否定語ばかり使ってしまうという先生のために、肯定的な言葉を使うために心掛けるポイントを2つ紹介します。
求める姿を声に出す
まず一つ目は、先生がダメだと思った行動を、本当はどういう行動にしてほしいのかを伝えることです。
しゃべらない→静かにしてほしい
走らない→歩いてほしい
登らない→下にいてほしい
触らない→見るだけにしてほしい
このように、『してほしくないことよりも「してほしいこと」を伝える』という方向に考え方をシフトチェンジしてください。
否定語を使った後が大事
最初にも書きましたが、否定語はよくないことは先生たちが一番よく分かっていることだと思います。
でもどうしても咄嗟の一言で「登らないで~」「投げないで~」「走らないで~」と声をかけてしまうのは保育あるあるですよね。
個人的な考えですが、否定的な言葉も、生活を共にする大人という存在の発した言葉で、人間らしさがあり100%良くない言葉かけだとは思っていません。
そこでポイントなのが、否定的なワードに、肯定的な追加文を足すということ。
理想としては
「歩く、だよ。走るとお友達とぶつかってけがをしちゃうから、走らないでね」
「おもちゃは優しくね、大事だから投げないよ」
などのように、否定語も交えることで、しないほうが良い行動とその理由、そのかわりにしたほうが良い行動がセットで理解できます。
年齢が低いと、なぜそれをしてほしくないのか、という理由はしっかり伝わらないかもしれませんが、一つ一つ丁寧に理由も伝えることが大切です。
子どもたちにとって、先生の声かけは立派な ‟環境” です。
少しの心掛けで、先生の保育の質がグンとアップします!!ぜひ、今回学んだ方法を保育の現場に取り入れてくださいね。
参考書籍
「保育現場における言葉」を大切にしているmozせんせいおすすめの書籍も紹介します!
今回特に参考にしたのは、働く人のための言いかえ図鑑です↓↓
なるほど~!!と思うことばかりなので、この本はかなりおすすめです♡
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