保育士として働いていると、日々多くの ‟予想外の出来事” に直面しますよね。
- 子どもの予期せぬ行動
- 保護者からの突然の依頼
- 園長先生からの指示
柔軟な対応力が求められる場面が多々あります。
しかし、臨機応変に動くことができず、日々の保育で戸惑ってしまうと感じている先生がとても多いようです。そんな積み重ねから「私は臨機応変に動けない」と悩んでしまう先生も。
そんな先生に向けて、私自身の経験と具体的な事例を交えて、改善策とアドバイスをお話したいと思います。
目次
臨機応変に動けない理由を理解する
まずは、臨機応変に動けない原因を把握することが大切です。考えられる理由としては、以下のようなものがあります。
計画に固執しすぎている
保育士として、事前に計画を立てることは重要ですが、あまりにもその計画に固執しすぎると、柔軟な対応が難しくなります。
たとえば、屋外活動を予定していた日が明らかに雨の降りそうな天気だった場合。「どうしても今日やりたい!」と無理やり計画通りに進めようとし、なんとかなる!と子どもたちを外に出す選択をしてしまうことも。
そして案の定、直ぐに雨が降り始め、慌てて園に帰ることになってしまい、子どもたちの安全や楽しみを損なうという結果に・・・
雨が降りそうだから、予定を変更しよう!と臨機応変な対応ができていれば、こんなことにはならなかったはずです。
逆に、雨の日かもしれないと感じた時点で室内でできるアクティビティに切り替える柔軟性があれば、子どもたちも楽しむことができ、保育士自身も安心して業務を進めることができるでしょう。
計画は大切ですが、状況に応じて変化しても大丈夫と考えられる力がないと、なかなか柔軟な対応は難しいかもしれません。
経験不足による不安
その時々の応じて変化しても大丈夫と思っていても、経験不足がゆえにそもそも対応方法が分かっていないという可能性があります。
経験が浅いと、突然の変化に対応するための判断力やスキルが不足しているのは仕方のないこと。
これは経験を積むことで徐々に改善されていくことだと思います。
たとえば、突然の怪我や外遊び中に泣いている子どもがいたときに、あなたならどう対応しますか?
けがの対応の経験があまりない先生は、どのように対処するか分からず、パニックに陥ってしまうことがあります。
しかし、経験を積むことで、こうした状況でも落ち着いて対処できるようになります。
経験不足に対しては、先輩保育士からの指導や、同僚との情報共有も大いに役立ちます。ワークショップや研修に参加して実践的なスキルを学ぶこともいい方法ですね。
徐々に経験を積むことで、自信を持って判断できるようになりますよ。
ストレスやプレッシャー
高いストレス状態に置かれていると、冷静な判断ができなくなりがちです。
保育士は多くの役割を担い、時には高いストレスを感じることが本当に多い職だと思います。
例えば、特に忙しい時期や、複数の子どもが同時に問題を抱えていると、冷静な判断ができなくなりがちです。このような状態では、柔軟な対応が求められる場面でも、つい固まってしまうことがありますよね。
高いストレス状態のときは、脳の前頭前野(判断や理性的な思考を司る部分)が上手く働かなくなり、感情的な反応が優先されやすくなります。その結果、冷静な判断や、論理的な対応が難しくなり、瞬間的な感情に左右された対応しかできなくなってしまうんです。
なので保育士さんは、ストレスを軽減するために、自分自身のメンタルヘルスを大切にすることが不可欠なんです。
適度な休息や趣味の時間を持つことで、ストレスを解消し、余裕を持った行動が可能になります。また、同僚とのコミュニケーションを深めることで、支え合いの環境を作ることも助けになりますよ。
日頃から心に余裕を持てることで、頭の回転が良くなり正常に臨機応変な判断ができるようになるというわけです。
臨機応変な対応ができるようになるための改善策4選
どうして臨機応変な対応ができないのか、自分自身を振り返ることができたところで、次のステップへ進みましょう!次は、臨機応変な対応力を高めるための改善策を4つ、事例なども含めながら紹介していきます。
自身の保育と照らし合わせながら、考えてみてください。
①事前にシミュレーションを行う
日々の保育について、あらかじめシミュレーションを行うことは、突発的な状況に備えるために非常に重要だと考えられます。
「もしこの状況が起こったらどう対応するか?」とシミュレーションしておくことにより、実際に予想外のことが起こった際に落ち着いて対応できるようになます。
〇〇になってしまった時は、▢▢か△△に変更しよう!
事前のシュミレーションのイメージをまずは一緒に共有していきましょう。
ここが結構重要です!
子どもの姿を想像しながら、その計画を進めていくとどんなことが起きる可能性があるかをピックアップしていきます。
STEP2でピックアップした ‟考えられる出来事” が万一起こってしまった時、どう対応するかを考えます。
この流れに沿って、具体例を考えていきましょう。
2歳児*製作での絵の具遊び
(2歳児クラス)絵の具を使った花火の製作あそび
- トレイに入った絵の具を使用し、指を使って画用紙に色を付ける
- 1つの机で4人ずつ行う
- 興味を持ってくれた子から作業に取り掛かる
- 製作をする子以外は、おままごとコーナーで遊んで待つ
- 絵の具が手に付くことを嫌がり製作ができない子がいる
- 絵の具が付いたことを嫌がる子がいる
- 絵の具が手についた状態で顔を触る子がいる
- 早くやりたくて、順番を待てない子がいる
- 途中で飽きてしまい嫌になる子がいる
- 待っている子の間で、友達間のトラブルが起きる可能性がある
- 途中でトイレに行きたくなる子がいる可能性がある
STEP2でピックアップした ‟考えられる出来事” が万一起こってしまった時、どう対応するかを考えます。
【1.絵の具が手に付くことを嫌がり製作ができない子がいることへの対応策】
絵の具が手につくことを嫌がって製作ができない子が出てくることの対応策として、事前にたんぽやスタンプなどの道具も用意しておき、手につかない形で製作に取り組めるようにしておく
【2.絵の具が手に付いたことを嫌がる子がいることへの対応策】
すぐに手が拭けるよう、プリンカップに一人一つずつお手拭きを用意しておく
【3.絵の具が手についた状態で顔を触る子がいる】
事前に絵の具のついた手で他のところを触らないことを約束しておく。すぐに拭いてあげられるよう、保育士ようにウェットティッシュを用意しておく
【4.早くやりたくて、順番を待てない子がいることへの対応策】
できるだけやりたがっている子から順番に取り掛かれるように配慮する
やりたい子は製作の机の近くで見ていてもいいことにする
【5.途中で飽きてしまい嫌になる子がいることへの配慮】
できる限りの声はかけるが、それでも無理な場合はそこまででOKにする
もし後日興味を持てれば、やれるようにしておく
【6.待っている子の間で、友達間のトラブルが起きる可能性がある場合の対応策】
活動と活動の間などは気が緩みやすいことを保育士間でしっかりと共有し、トラブルが起きないよう保育士の配置を考えておく
遊びが持続しないことも考えて、いくつか静の活動ができる玩具を用意しておく
【7.途中でトイレに行きたくなる子がいる可能性があることへの対応策】
製作が始まる前にトイレは済ませておく
このように、計画に対して起きるかもしれない出来事をいくつか予想し、そうなった場合にどう対処するのかを事前に心構えしておきます。こうすることで、突発的な出来事が起きたとしても、臨機応変に対応することができるようになります。
対応策の例一覧
保育計画だけにとどまらず、日常の保育でも様々ま対応策をピックアップしてみました。
天候 | 外遊びを予定していたが、突然の雨の場合は室内遊びに切り替える。 |
子どもたちの気分 | 絵本の読み聞かせを予定していたが、子どもたちが体を動かしたがっている場合、ダンスや体操に変更。 |
突然の怪我 | 予定していたアクティビティ中に子どもが転んで怪我をした場合、すぐに応急処置を行い、活動を安全な内容に調整。 |
興味の変化 | 子どもたちが特定の玩具や遊びに興味を示した際、その興味に合わせた活動を提案する。 |
職員の指示 | おもらしをした子がいて困っているので、それ以外の子を一緒に保育する |
子どものトラブル | 泣いている子がいた場合、無理に計画を進めるのではなくクラス全体で立ち止まり、原因を聞き泣いている子への対応を優先する。 |
例えば、
・突然泣き出してしまう子がいた場合は、けがの有無を確認し、気持ちが落ち着くまで寄り添う
・書写の時間集中できないから、一度手を止めて気分転換に外で遊ぶ
・保護者から、難しい質問をされた場合、回答に困ったら必ず園長か主任から返事をしてもらうよう伝える
など。
シュミレーションと同時に、園全体としての、マニュアル等をしっかり確認しておくことも大切です。
②優先順位を意識する
突発的な出来事が起こった場合、何が最も重要かを瞬時に判断する力が求められます。そのため、常に優先順位を意識するようにしておくことで、柔軟な対応が可能になります。
考えられる優先順位の例
私が日頃心掛けている優先順位をお伝えしたいと思います。この優先順位を念頭に置いておくだけで、咄嗟の対応で何を最優先に対応すべきなのかを判断することができますよ。
①緊急事態への対応(安全・命に関わる問題)
火災、事故、急病、災害など、子どもの命や安全が直接危険にさらされている場合は、最も優先して対応すべきことです。
必用に応じて、避難誘導や救急対応を迅速に行い、すぐに助けを呼ぶことが必要です。
②健康問題や体調不良の対応
子どもが突然体調不良を訴えた場合や、ケガをした場合も優先順位も優先順位が高めな出来事です。
体調不良の場合は適切な医療機関への連絡や保護者への連絡、ケガの場合は応急処置が必要です。
③情緒的な問題やトラブルの解消
子ども同士のトラブルや情緒不安定な状況が発生した場合、特に問題がエスカレートしている場合は、早急に介入することが重要です。
子どもたちの感情を落ち着かせ、必要ならば個別に対応します。
④集団活動やスケジュール調整
集団で行う活動やスケジュールに予定外の変更が必要な場合、例えば天候の急変で屋外活動ができなくなるなど、その場に応じて代替案を考え、スムーズに切り替えることが求められます。
⑤保護者からの緊急連絡や対応
保護者からの緊急な連絡(家庭の急用や迎えの変更など)も、速やかに対応する必要があります。特に保護者と子どもの間で連絡が取れない場合は、保育士が仲介する役割を果たします。
突発的な問題が発生した際は、チームとして保育士間で役割分担を素早く決め、効率よく対応することが求められます。ある保育士が特定の問題に対処している間、他の保育士が残りの子どもたちの安全を確保するなど、協力体制を整えることも大切です。
優先順位に関しては、園全体で共通理解しておくことをおすすめします。
③過去の事例を参考にする
過去の事例を参考にしながら臨機応変な対応をすることは、保育士にとってとても大切なスキルです。保育の現場では、毎日さまざまな出来事が起こり、その都度適切な判断と対応が求められます。過去の経験や他の保育士がどのように対応したかを学ぶことで、より良い選択肢を見つけられることがあります。
たとえば、ある子どもがケガをしたときに、どのように周りの子どもたちを安心させ、負傷した子どもをケアしたかといった経験は、今後の同様の状況で役立ちます。また、事例を振り返ることで、自分の対応を見直し、さらに成長する機会にもなります。他の保育士がどんな工夫をしたのかを知ることで、自分の中に引き出しを増やすこともできます。
もちろん、失敗例を共有することも有効!あの時〇〇でダメだったから、今回は△△で対応しよう。と対応策を変えてみることもできるようになります。
日々の保育の振り返りも、できるだけ具体的に保育士間で共有しておけるといいですね。
④自己成長を促す習慣
最後に、臨機応変に動けるようになるためには、自己成長のための習慣づけも大切です。日々の業務の中で「今日対応が難しかったこと」「もっと良い対応ができたかもしれないこと」を振り返り、次に生かす意識を持つことが成長につながります。
- 振り返りの習慣を持つ
日々の業務終了後に、簡単にでも良いのでその日の業務を振り返り、改善点を見つけることを意識しましょう。 - 他の保育士との情報共有
同僚や先輩保育士との意見交換やフィードバックを受けることも大切です。異なる視点やアドバイスを受けることで、自分では気づけなかった改善点に気づくことがあります。
保育の振り返りは、大きな事故を防ぐだけでなく先生方のスキルアップにとても重要なこと。
日々、自己成長していけるよう前向きに保育に取り組んでもらえたらいいなと思います。
臨機応変に対応する改善策まとめ
今回は、この4つの改善策を紹介しました。
臨機応変に対応する力は、保育士として成長し続けるために非常に重要なスキルです。焦らず、日々の業務の中で少しずつ改善を図り、子どもたちや保護者、そして同僚から信頼される保育士を目指しましょう。
これからも、日々の現場で感じたことや役立つアドバイスをお届けしていきます。引き続き、共に成長していきましょう!
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