インクルーシブ保育とは?キーワードは「多様性と共生力」

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インクルーシブ保育という言葉をよく耳にするようになりましたが、インクルーシブとはどんなことか知っていますか?

インクルーシブ保育ってどんな保育のこと?
インクルーシブという言葉がなんだか難しそう・・・
インクルーシブ保育を具体的に知りたい!

こんな悩みをすっきり解決し、今後の保育に生かせるようにお伝えしていきますね。

インクルーシブ保育とは

簡単にいうと「多様性」

私自身も「インクルーシブ保育」という言葉を耳にしたのは、数年前。

インクルーシブとは、「包括的な、包み込んだ」という意味。

 

あらゆる背景を持つ人々が排除されない社会を目指す理念のことを指しています。

具体的には、障がいの有無や国籍、年齢、性別などに関係なく、違いを認め合い、共生していく社会のこと。「多様性」を認めあって生活できる社会を目指してくという観点から、「インクルーシブ保育」ということが謳われるようになりました。

具体的な考え方

では、具体的にどのような考えのことなのか掘り下げていきたいと思います。

先ほども書きましたが、障がいのある子どもも、気になる子どもも、いわゆる健常児(定型発達児)もみんなが同じ場所で共に喜び学び育ちあうという保育という考え方です。

インクルーシブ保育は本来、子どもたちを何らかの理由で分離せず、違いがあるからこそ豊かに育ち会えるとの考えに基づき支援して行くことを求められています。

少し難しい言い方をすると、各自の尊厳を認め合いながら、生きて人間力を培うという理念において実践されていくものとされています。

 

なぜインクルーシブ保育が必要なのか

インクルーシブ保育の目的は2つ

①誰でも平等に学び選択して生きていく

②多様な人と関わる「共生力」を育む

大まかにいうと、この2つの目的があるといわれています。

 

①誰でも平等に学び選択して生きていく

今までの教育現場では、難病や障害のある子どもとそうではない子ども(健常児)を切り離し、別々の環境で教育することが良いとされてきました。

しかし、2022年、国連がこの「分離教育」を止めるよう勧告したんです。

それは、障害のある子どもにとって、人生経験や人間関係、社会経験の機会を奪ってしまう可能性があるから。

障害があることを社会全体が区別して過ごすことによって、本来もっと選択肢のある人生の幅を狭めてしまっているんです。なので、その壁をなくし、誰もが平等に学び選択していける世の中をめざすという目的です。

 

②多様な人と関わる「共生力」を育む

また障害のあるなしに関わらず、自分とは異なる個性や価値観を受け入れる心を育み、誰もが活躍できる共生社会を実現していくためには「共生力」が必要になってきます。

 

そのため、乳幼時期の小さいうちから、それが当たりまえという考えを育んでいくことが大切になります。

社会に出れば本当にさまざまな人と関わりますよね?

そのときに抵抗感を覚えない、多様な人たちと柔軟に関わることができる、いわゆる「共生力」を備えた人たちを育成したいと考えられています。

参考文献:共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告) 概要:文部科学省 (mext.go.jp)

 

具体的な取り組み

でも、「多様性」「お互いを認め合って」「共生力」と簡単にいわれてもイメージが付きませんよね。

そこで、実際の事例を紹介しつつ、先生方の保育に取り入れていけるようお伝えしたいと思います。

事例① 片付けが苦手なSちゃん

Sちゃん(3歳女の子)

日頃から園内では気になる子とされているが、具体的な診断はないSちゃん。

片付けの時間が苦手で、片付けるよと言われると「もっと遊びたかった!」「片づけない」と毎回泣き始め、次の活動に移ることが難しい。

泣いて癇癪を起してしまうため、個別の対応が必要。

癇癪が酷くなってしまうので、Sちゃんが納得のいくまで遊んでいることも多い。

この場合、まずはSちゃんがなぜ片付けられないのか、それを受けて周りの子がどう感じているのか、を読み解いていきます。

考えられる原因発達障害の傾向があり自分では感情を抑えられない?
感情のコントロールが苦手?
次への見通しが持てない?
1つのことへのこだわりが強くなってしまう

 

本人が困っていること自分で気持ちの整理ができない                 
次の行動や生活の流れが分からない
見通しが持てない

 

周りの子が困っていること片づけるよう声をかけると、急に泣き始めるので戸惑う
いつまでも片づけず、遊んでいるのでずるい               
関わり方がわからない

 

保護者が困っていること気持ちの切り替えができないことで、忙しい時間に対応できない 
我が子一人だけ他の事違うことをしていて不安

インクルーシブな対応

片付けに見通しが持てるよう、見やすい時計などを用意し、個別に片付けの時間を知らせる

「あと5回遊んだら、終わりにしようね」など、具体的な回数を提示する

他の子へのインクルーシブな対応

「Sちゃんだけずるい」と言われたら、

「そうだよね、先生も本当は一緒にお給食にしたいんだ。でもSちゃんはウサギの人形が大好きでもっと一緒にいたいみたい」
「Uちゃんも今度一緒に遊んでみる?」

など、訴えてきたこの気持ちも受け止めつつ、先生もそう思っているよ。と自分の感情を伝えます。

そうすることで、Sちゃんの気持ちを代弁することができ、他の子にもその状況やSちゃんの感情を伝えることが出来ます。

変にごまかしてしまうのではなく、Sちゃんの状況を伝えたり、それを受けて先生がどう感じているのかも伝えるようにします。

 

補足*このような時計は、発達支援の現場でも良く使用されています。

mozせんせい
mozせんせい

Sちゃんのように気持ちの切り替えが苦手な子にとって、目で見える環境はとても効果的であり、また他の子にとっても分かりやすく時間を学ぶことが出来る機会になるかもしれませんね。

 

事例② 多動が気になるTくん

Tくん(4歳男の子)

入園前から多動の傾向あり

診断は受けていないが、じっとしていることが苦手など、気になる姿が多い

朝の会で座っていられなかったり、話の途中でも席を立ち気になる方へ行ってしまう

前を見ていないことも多く、他の子にぶつかってしまうことも多い

 

考えられる原因 ADHDの傾向があり、動くことを自分で止められない?
今何をしたらいいのか判断が難しい?

 

本人が困っていること身体が勝手に動いてしまう              
怒られている理由が分からない
周りの子が何をしているのかよく分からない

 

周りの子が困っていること急にぶつかったりするので怖い             
関わり方がわからない
話しかけてもあまり聞いてくれない
立ち歩いてる子がいることで、落ち着かない          

 

保護者が困っていること何度言い聞かせても、危険なことばかりする
怪我や事故が心配 
我が子一人だけ他の事違うことをしていて不安

インクルーシブな対応

指示が通らなときは絵カードなどを使用し端的に伝える

思い切り体を動かして動きたい欲求を満たせるようにする

スモールステップで、できたことをたくさん褒める

立たないよ!ダメだよ!危ないよ!などの声掛けは事態を悪化させてしまうので、端的な言葉で伝える

環境面でインクルーシブ対応

職員同士で声をかけ合い、園全体の安全を見守る

その子の好きな遊びを把握し、落ち着ける環境を作る

他の子どもと比較しない

どうしても、「走らないで」「ちゃんと座らなきゃダメ」など、否定語や強制的な声をかけがちになってしまいますが、Tくんにとってみたら苦痛でしかありません。

また否定的な言葉は、Tくんの自己肯定感を下げてしまう原因に・・・・。

 

mozせんせい
mozせんせい

障害のある子を無理に集団に合わせるのではなく、その子どもに合った対応方法を園全体で共有できるといですね。

 

自身の保育を振り返って、否定語が多いなと感じた方は、否定語を肯定語に変える方法も紹介しています。かなり参考になりますよ。

現役保育士直伝!!否定的な言葉を肯定語に言い換える方法と肯定語一覧

インクルーシブ保育とは

まだまだ事例の紹介もしたいところですが、最後にもう一度「インクルーシブ保育」についてまとめておきます。

インクルーシブ保育とは

障がいのある子どもも、気になる子どもも、いわゆる健常児(定型発達児)もみんなが同じ場所で共に喜び学び育ちあうという保育

のことを言います。

障害がある子もない子も、同じ空間で育ち学び合うことで、「共生力」を培うという意図やねらいを持ち、保育をしてくことが求められているということです。

この記事は「インクルーシブな保育」という本を参考にしています。

インクルーシブな保育の事例がたくさん載っているので、よく理解できなかった、という方は、参考になりますよ。

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